演題
● 『今後の不眠症の治療について』
日時
2021年 4月 22日 18:45~20:30
場所
笠岡グランドホテルより配信:個人PC・スマートホンよりWeb視聴
開催形態
ZOOMウェビナーにてWeb配信
演者
国定病院 院長 北村 吉宏 先生
①不眠症の診断 ②不眠症の治療ガイドライン ③デエビゴの位置づけ(どう使っていくか)
について分かり易く説明いただいた。
不眠症の診断と分類
寝つきが悪いのか? 中途覚醒なのか? 眠りが浅いのか?
・1か月以上かつ、3日/w以上
・昼夜、不眠へのとらわれとその影響について過度の心配がある。
・日常生活に支障がある。
3つの不眠のタイプ
・過覚醒型→訴え強く効果出にくい
・リズム障害型→寝だめ夜型悪化:生活リズムを直す
・睡眠恒常性障害型→睡眠習慣の改善:デイサービス、デイケアへの利用・誘導をする
不眠重症度質問票(ISIを使用)
・現在の睡眠パターンの満足度・・・主観的評価(基本的にはご本人の意見)
・ポリグラフィー(脳波、眼球運動を調べ、薬の対応に役立てる)
脳波→90分が周期なので、正しい睡眠がとれているか、確認できる。
日常生活の中でのスケジュールなどにより影響を受ける。このため,睡眠日誌を(少なくとも2週間以上)記入して頂くと,不眠,過眠,概日リズム障害,睡眠不足などの診断に役立てることができる。
不眠症治療のアルゴリズムを念頭に置いて考える。
・どういった不眠?
・質、どう感じておられるか?
・眠れないとどのような症状があるのか?
・日中調子よく過ごすのに何時間必要と
思われているか?
・カフェイン、アルコールの使用
・就寝直前どのように過ごしているのか?
・身体、精神疾患はあるか?何か薬を飲んでいるか?
睡眠中に異常を起こす薬剤
寝ぼけ・・・リーマス、三環系抗うつ薬、向精神薬
健忘・・・睡眠剤
悪夢・・・β-ブロッカー、ドパミン作動薬、ベンゾジアゼピン系
客観的な睡眠時間の年齢的推移
70代以上で5.5時間
浅いノンレム睡眠は年齢差なく5時間弱。
ぐっすり眠る深いノンレム睡眠は年齢とともに減っている→増やすには薬の力が必用
(アルコールは、深い睡眠を減らすので、睡眠薬代わりに使うのはやめて。)
レム睡眠(体を休める睡眠)
も年齢とともに減っている→増やすためにはしっかり動くこと(運動するしかない)
障害対処12の指針 (厚生労働省より睡眠)
薬剤の話
ベンゾジアゼピン系・・・レム睡眠短く寝つき良いが、浅い眠りを増やすので、せん妄を増やす。
ロゼレム・・・せん妄なし
トラゾドン・・・依存少ない、寝つきは良くならないが深い眠り。1/2t 6-7H。高齢者によく使う。
ミルタザピン・・・高齢者によく使う
クエチアピン・・・深い睡眠を増やす。1/2t 6-7H
リスペリドン・・・深い睡眠を増やす。1/2t 20H
オランザピン・・・深い睡眠を増やす。
デエビゴについて
効果発現時間は15~30分
大きな違いは消失半減期
デエビゴ・・・wピークあり、実際の効果は4-5時間で切れるため、位置付けとしては4-8H短時間型と同じ位
・食後だと、効果発現が遅くなる。夕食時間から就寝時間までの間が短い方には不向き(最低でも2H以上)
・レム睡眠を増やすので、悪夢を見やすい。→悪夢を見るようなら量を増やしてみる。
オレキシンが結合する受容体にはオレキシン受容体1とオレキシン受容体2があり、レム睡眠の抑制には受容体1と受容体2の両方が、覚醒の安定には主に受容体2が関与(受容体1も一部関与)している。
デエビゴもベルソムラもオレキシン受容体1とオレキシン受容体2を阻害(ブロック)することで覚醒状態から睡眠へと導く。
(オレキシン受容体2を阻害する強さがより睡眠に強く関与すると考えられており、デエビゴはベルソムラより睡眠に対する作用が強いと想定される。)
ベンゾジアゼピン系薬剤からの切り替え
ベンゾジアゼピン系薬剤は長期に使っていると、依存やふらつきによる骨折、認知機能の悪化といった好ましくない作用が出現することが分かってきた。
そうなりにくい薬の変更を患者様が希望されれば、鎮静系向精神薬・オレキシン受容体拮抗薬への切り替えを提案、試してもらう。
個人的には、鎮静系向精神薬としてレスリン、リフレックスを、オレキシン受容体拮抗薬としてデイビゴを候補としてよく使う。
ベンゾジアゼピン系薬剤を減量して、鎮静系向精神薬・オレキシン受容体拮抗薬を開始。(2~4週間)、その後は、ベンゾジアゼピン系薬剤を頓服的内服へ減らして切り替えていく。
ベンゾジアゼピン系薬剤は、予防的ではなく、症状に合わせて不安になったら服用し、できるだけ減らす努力をしてもらう。