演題
●漢方薬の分子機序「利水作用とアクアポリン」
日時
2016年10月1日
会場
福山大学 宮地茂記念館 9F
講師:磯濱 洋一郎 先生(東京理科大学薬学部応用薬理学教室)
座長:岡村 信幸 先生 (福山大学 薬学部 漢方薬物解析学研究室)
共催:福山薬剤師会 / 株式会社ツムラ
磯濱先生の、漢方薬との出合となった「麦門冬湯の鎮咳作用を実験科学的に証明」するための実験過程のお話に始まり。 魅力的な標的分子とは何かとの、考えから、基本的な気・血・水を考えられている時、アクアポリンの存在が分かって来たそうです。また、アクアポリンはすでに13種類のアイソフォームが同定されているとのことです。
磯濱先生の基本的なスタンスは、「漢方薬の作用を明らかにしていくと、特定 の活性成分が出て、新しい標的、薬物の受容体、標的分子がわかり、またそれを西洋薬的に応用することや、そこから薬を創っていけるかもしれない。」ということだそうです。
五苓散は、水銀と同じように、細胞膜の水透過性を抑制する作用が、確かにありますが、これだけだと、 本当にアクアポリンの阻害かどうか、まだちょっと疑わしいですね。
五苓散の構成生薬の活性について検討すると、主に蒼朮と猪苓に強い活性が認められ、一番再現よく、 強い作用が認められた、蒼朮に特に注目しました。
五苓散や蒼 朮では、細胞膜の膜電位は全く動きません。細胞内外への電解質の移動 は、おそらく全く関係ないと思います。少なくとも脂質膜の水透過性には影響しない。間違いなく、アクアポリンを抑制する作用が、五苓散、そして蒼朮の中にあ ると考えています。
五苓散の利水作用に関するアクアポリン仮説として、異常な水の流れを止めるのではないだろう かと考えます。
その仮説を証明するための、実験過程の詳細。脳神経外科領域で、慢性硬膜下血腫や脳浮腫に対する五苓散の臨床応用が進んでいる話。
アクアポリンは分泌腺にもたくさんあり、唾液腺、汗腺、気管支腺、これらにはアクアポリン 5 番タイプがたくさんあります。これをノックアウトすると、乾き、分泌が減るという現象が起こる。このことを突き止めるためにアフリカツメガエル卵胞細胞を用いて実験について巣の他まだまだ、多くの、実験過程と研究成果についてお話下さった。
内容は難しかったのですが、大変興味深いお話で磯濱先生の世界へ引き込まれた100分間でした。